先進的窓リノベと宅配ボックス設置で実現する攻めの節税|補助金と少額減価償却資産の特例を活用する方法

不動産賃貸経営

節税は「経費を増やすこと」ではありません

節税という言葉を聞くと、とにかく経費を増やして税金を減らすことだと考えがちです。

しかし、節税だけを意識した場合、手元のキャッシュが減るだけで、収益性向上には寄与しないケースが多いように思います。

私が考える望ましい節税とは、将来の収益力や資産価値の向上に資する支出を行い、その結果として税負担も適正化される状態をつくることです。

大家業の視点でいえば、入居率向上や空室期間の短縮につながる支出であり、その結果として節税になるものが望ましい節税といえるのではないでしょうか。

今回は、

・先進的窓リノベ事業を活用した窓枠設置工事
・各戸専用の宅配ボックス設置

を組み合わせ、バリューアップと節税を同時に実現した事例を紹介します。


先進的窓リノベ事業を活用した窓枠設置工事

まず前提となるのが、環境省が実施している先進的窓リノベ事業です。

公式サイトはこちらです。
https://window-renovation2026.env.go.jp/

高断熱窓への改修に対して補助金が交付される制度であり、既存住宅の断熱性能向上を後押しするものです。

賃貸物件において窓性能を高めることは、次のような効果があります。

・冬場の寒さ対策
・結露の抑制
・カビやクロス劣化の防止
・防音性の向上

築年数が経過した物件ほど、「寒さ」は明確な弱点になります。

古い物件では単層ガラスのケースも多く、寒冷地では単層ガラスというだけで物件が選ばれにくいこともあります。

大家業としては、そこを改善することは有効な空室対策になります。


事例A:窓枠設置工事を30万円未満で実施

ある所有物件で、内窓設置工事を28万円で実施しました。補助金も活用しています。

ここで活用したのが、王道の少額減価償却資産の特例です。

国税庁による説明はこちらです。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm

中小企業者等であれば、取得価額30万円未満の減価償却資産について、一定の要件のもと全額を損金算入することができます(年間合計300万円まで)

なお、2026年4月1日から取得価額40万円に引き上げられる見込みです。→財務省 令和8年度税制改正の大綱

28万円の窓枠設置工事を当期に一括で経費処理することが可能です。

仮に実効税率を30%とすると、
28万円 × 30% = 約8万4千円の税負担軽減になります。

さらに補助金によって実質負担が圧縮されれば、少ない自己資金で断熱性能を向上させることができます。

これは単なる節税ではありません。
物件の競争力を高めながら、税務上も合理的な処理を行っているのです。


各戸専用宅配ボックスの設置で差別化する

次に行ったのが、メゾネットタイプ(専用庭あり)の物件への各戸専用宅配ボックスの設置です。

ECサイトでの買い物が一般化した現在、宅配ボックスの有無は入居判断の重要な要素になっています。

アパートでは共用型宅配ボックスが採用されることが多いですが、専用庭付きメゾネットの場合は、あえて「各戸専用」とすることでバリューアップによる差別化と大きな節税効果が同時に得られます。

なお、戸建感覚の強いメゾネットタイプと各戸専用宅配ボックスの相性は良く、入居者様からも受け入れられやすいです。


事例B:戸あたり10万円未満で宅配ボックスを設置

重要な点は、「各戸あたりの費用を9万円程度に抑えた」ことです。

国税庁によると、
「使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とします。」
とされています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm

したがって、10万円未満の資産については、通常、全額を当期の必要経費として計上することが可能です。

例えば8戸に設置した場合、
9万円 × 8戸 = 72万円です。

72万円を当期経費とすることで、実効税率30%なら約21万6千円の税負担軽減となります。

一方で、72万円の共用型宅配ボックスを一体の固定資産として導入した場合、法定耐用年数を10年とすれば、72万円を10年間にわたり償却することになります。

その場合、当期の節税効果は限定的になります。

比較表をご覧ください。

項目共用型宅配ボックス各戸専用宅配ボックス
設置形態1基を共用部に設置各戸ごとに設置
1戸あたりの取得価額約9万円
税務上の扱い一体資産として固定資産計上全額を業務の用に供した年分の必要経費とする
経費計上方法減価償却
(例:耐用年数10年)
消耗品費として全額計上
当期経費算入額約7.2万円
(仮に定額法とする)
72万円
当期税負担軽減額(30%)約2.1万円約21.6万円

大家業の本質に目を向けると、宅配ボックスの設置により、

・不在時でも荷物が受け取れる
・共働き世帯との親和性が高まる
・入居募集時のアピールポイントになる

といった効果が期待できます。

特にメゾネットタイプの物件は、子育て世帯に選ばれることが多いです。

お子様だけが在宅している場合でも玄関を開けずに荷物を受け取れる点は、セキュリティ面でも評価されやすいポイントです。

収益性の観点では、仮に家賃を月1,000円上げられれば、
1,000円 × 12か月 × 8戸 = 年間96,000円の増収になります。

単なる消耗品費ではなく、収益力を底上げする設備投資といえます。


攻めの節税を考える

今回の施策に共通しているのは、次の点です。

・物件の競争力を高める設備に限定する
・少額減価償却資産の特例を活用する
・10万円未満資産の経費処理の取扱いを活用する
・補助金を活用して実質負担を抑える

無理に経費を作るのではなく、将来の家賃や入居率に影響する部分に資金を投下することが重要です。

窓の断熱性能向上と宅配ボックスの設置は、いずれも入居者満足度に直結します。

その結果として、空室リスクの低減や売却時の評価向上にもつながります。


まとめ

節税は目的ではなく、手段です。

先進的窓リノベ事業を活用した窓枠設置工事を30万円未満で実施し、少額減価償却資産の特例を使って一括経費化する。

さらに、各戸専用の宅配ボックスを10万円未満で設置し、当期の必要経費として計上する。

これらは、単なる税金対策ではなく、物件の価値を高めるための戦略的な支出です。

税金を減らすためにお金を使うのではなく、将来の収益力を高めるために投資し、その結果として税負担も抑える。

それが、賃貸経営における健全な節税の考え方だと考えています。

以上、ご参考になれば嬉しいです。

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