日本年金機構から『厚生年金保険・健康保険の加入状況にかかる調査票』という文書が届きましたので、対応結果について実体験を交えてお伝えします。
基本的には下記のような実態で、厚生年金保険・健康保険に加入していないマイクロ法人向けの内容です。
・家族を非常勤役員としているマイクロ法人
・本業が会社員で副業として一人社長の会社を経営していて役員報酬をとっていない
厚生年金保険・健康保険の加入状況にかかる調査票の趣旨
厚生年金保険・健康保険(社会保険)の制度では、法人事業所(被保険者1人以上)と従業員を常時5人以上雇用している個人事業所は、社会保険に加入することが義務付けられています。一方で社会保険料の負担は個人・法人双方で負担が大きいため、社会保険への加入を逃れる事業者がいるようです。そのため、社会保険への加入のための指導強化の一環として『厚生年金保険・健康保険の加入状況にかかる調査票』を送付して加入を促すのです。
つまり、加入を促すべき事業者かどうかを年金事務所が判断するための調査票ということです。
質問内容と回答結果
事業者の情報
はじめに事業者の情報を記入します。
- 回答年月日
- 事業所名称
- 事業所所在地(労働管理を行っている場所)
- 電話番号
- 担当者氏名
【1】事業の内容についてご記載ください。
事業の内容を問われます。
従業員を常時5人以上雇用している個人事業所であっても、農林・畜産・水産業、理容・美容、飲食店などは社会保険の加入は任意であるため、最初に業種で選別する意図があると考えられます。
【2】現在、厚生年金保険・社会保険に加入されていますか。
イ. 共済組合に加入している。
ウ. 厚生年金保険・健康保険に加入していない。
エ. 個人事業所であり厚生年金保険・健康保険に加入していない。
ここで、「ウ」または「エ」を選択した場合は【3】~【5】に回答します。
『厚生年金保険・健康保険の加入状況にかかる調査票』は社会保険に加入していない事業者に送付されますので、多くの方は「ウ」または「エ」を選択することになります。
【3】役員(事業主や監査役なども含む)または従業員について、その人数と内訳をご記入ください。
下記のような表に記入する形式です。
役員の欄は細かく区分されていますので、年金事務所は、役員報酬の支払いがあるかどうか、また非常勤であるかどうかという経営の実態をみて判断していることが伺えます。
ここで、「②役員(報酬の支払い無し)」の場合は、社会保険に加入する権利はありません。
役員を含めた全員の内訳 | 左記のうち事業主本人とその親族の方の人数 | |||
内訳 | ①役員(報酬の支払い有り) | 常勤 | ||
非常勤 | ||||
②役員(報酬の支払い無し) | ||||
③常時使用されている従業員 | ||||
④パートタイマー (週の労働時間がおおむね30時間以上) |
||||
⑤パートタイマー (週の労働時間がおおむね30時間未満) |
||||
合計 |
私の場合は、下記のように記入しました。
ちなみに、他の欄を空欄にしてしまったので、後で電話で問い合わせがありました。
空欄が無いように、該当しない箇所は「0人」としましょう。
役員を含めた全員の内訳 | 左記のうち事業主本人とその親族の方の人数 | |||
内訳 | ①役員(報酬の支払い有り) | 常勤 | ||
非常勤 | 1人 | 1人 | ||
②役員(報酬の支払い無し) | 1人 | 1人 | ||
③常時使用されている従業員 | ||||
④パートタイマー (週の労働時間がおおむね30時間以上) |
||||
⑤パートタイマー (週の労働時間がおおむね30時間未満) |
||||
合計 | 2人 | 2人 |
【4】上記【3】で記入した役員を含めた全員について、年代別人数を教えてください。
下記の表に記入します。
70歳以上の労働者は厚生年金保険料の徴収はないため、年齢で判別するためにこのような欄があるのでしょう。
従業員の年齢 | 20歳代以下 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | 70歳代以上 |
人数 |
【5】厚生年金保険・健康保険に加入していない理由を教えてください。
最後に厚生年金保険・健康保険に加入していない理由を問われます。
記号 | 理由 |
ア | 現在、加入に向けた手続きを進めて(考えて)いる。 |
イ | 事業を行い、賃金・報酬の支払を行っているが、 社会保険の加入手続きを行っていない。 [理由(いずれかに○)] ①保険料の負担が困難 ②従業員の同意が得られない ③手続きが面倒である ④加入にメリットを感じない ⑤その他( ) |
ウ | ○年○月頃から事業を休業しており、 事業再開見込みは○年○月頃又は未定。 |
エ | ○年○月で事業は廃止しており、 現在においても事業は行っていない。 |
オ | 上記ア~エ意外の理由( ) |
・役員報酬をとっていないオーナー社長
・家族を非常勤役員としているマイクロ法人
・本業が会社員で副業として一人社長の会社を経営していて役員報酬をとっていない
本稿の前提である上記の状態が継続する(させる)場合は、「ア~エ」のいずれにも該当しないため、「オ」に実態を素直に記入することになります。
実態 | 回答例 |
・一人社長で報酬なし | 代表取締役が1人で役員報酬を支払っていないため。 |
・一人社長で報酬なし ・家族が非常勤役員 |
代表取締役が1人で役員報酬を支払っておらず、他の役員は非常勤であるため。 |
私の法人の場合は「一人社長で報酬なし、家族が非常勤役員」が実態なので、「非常勤役員のため」と記入しました。しかし、この回答では、社長である代表取締役に役員報酬を支払っているかどうかがわからないため、後に電話にて問い合わせがあり、代表取締役に役員報酬を支払っているかどうかを質問され、説明の上ご理解いただきました。
提出後の電話問い合わせ
『厚生年金保険・健康保険の加入状況にかかる調査票』を提出した後に必ず電話があると思います。
電話では、調査票から読み取れなかったことの質問や、今後も同様の電話をかける旨を伝えられました。また、「一人社長で報酬なし」の場合でも、代表取締役に役員報酬を支払う場合は常勤扱いとなり、社会保険に加入することになることについて念をおされました。
まとめ
基本的には全ての法人には社会保険への加入義務があります。今回紹介した『厚生年金保険・健康保険の加入状況にかかる調査票』を皮切りに社会保険への加入の催促は強化されることと思います。
いずれにしても、事業を営み生活していくためには法律に従って適正に対応すべきです。
実態を素直にお伝えすることが大切です。
以上、ご参考になれば嬉しいです。
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