【マイクロ法人】会社が所有する車両をプライベートでも使用する場合の規定の設計【計算例あり】

会社

マイクロ法人のような小規模法人の場合、会社が所有する車両を社長がプライベートでも使用するケースは多々あると思います。

この場合、法人が社長に無償で社有車を貸与したと判断されないように事前対策が必要です。

一案として、社有車の利用規定や、法人と社長との契約書などで、プライベートで使用した場合の使用料を社長から法人に支払うことを定めておくことで、プライベートでの使用をできるようにするという方法が考えられます。

ところで、「プライベートで使用した場合の使用料」を決める必要がありますが、明確な金額の基準が無く、また少々デリケートな内容であるためか、具体的な数字を使った計算例が見つかりにくいのが実情です。
そこで、当ページでは具体的な使用料の決め方について考察してみました。
※個別の事案については顧問税理士等にご相談ください。

Step 1 減価償却費の確認

はじめに、最も大きな経費になる車両の情報を確認します。
今回は中古の普通乗用車、取得価格は3,000,000円とします。
言うまでもなく減価償却費は車両関係の経費の大部分を占めることになります。

車両 中古の普通乗用車(4年落ち)
取得価格 3,000,000円
法定耐用年数 2年
償却方式 定額法(償却率0.5)
償却限度額(1年目) 1,500,000円
償却限度額(2年目) 1,499,999円

Step 2 その他の経費をまとめる

次に1年間にかかる減価償却費以外の経費をまとめます。
今回は下記5つの項目としています。

自動車保険料 40,000円/年
自動車税 50,000円/年
支払利息(ローン有の場合) 50,000円/年
車検代 50,000円/年
メンテナンス代(タイヤ等) 50,000円/年
合計 240,000円/年

Step 3 月間の経費を求める

1年目を例にとって考えると、
減価償却費 + その他の経費 = 1,740,000円
12で割ると、
145,000円/月・・・①
となり、
①が法人がひと月に負担する経費であり、
この月間の経費を法人利用とプライベート利用の割合で分けます。

Step 4 法人利用とプライベート利用の割合を求める

ここが最も難しく、また個別事情によって変動する項目です。
プライベート側では使用記録簿を、法人では事業計画や実績などからできるだけ実態に合わせて使用割合を求めます。
今回の例では不動産管理を行う法人を例に、車両を使用した時間を基準としてプライベートでの使用割合②と使用時間③を計算しました。

分類 内訳 使用時間 使用回数 使用時間 使用割合 番号
分/回 回/月 分/月 %
プライベート 日常移動 50 15.00 750 11.2
プライベート 長距離移動 500 0.25 125 1.9
法人 建物管理業務 700 4.00 2,800 41.9
法人 消耗品等購入 200 4.00 800 12.0
法人 物件調査(市内) 200 6.00 1,200 18.0
法人 物件調査(県外) 2,000 0.50 1,000 15.0
合計 6,675 100.0
法人の使用割合(%) 86.9
プライベートの使用割合(%) 13.1
法人の使用時間(分/月) 5,800
プライベートの使用時間(分/月) 875

Step 5 使用時間あたりの燃料代を求める

次に使用時間あたりの燃料代を求めます。
可能な限り客観的に求める必要があるため、省庁の調査結果から引用、計算しています。
なお、今回は昨今の燃料価格の変動に対応できるように燃料代を個別に計算しますが、
1年間の燃料代をStep 2に入れても問題ないと思います。

計算値の名称 燃料代 単位 出典又は計算式 番号
燃料価格 144.6 円/L 経済産業省※1
燃費 24.1 km/L 国土交通省※2
平均旅行速度 35.1 km/時 国土交通省※3
使用時間あたりの燃料代 3.5 円/分 (④÷⑤)×(⑥÷60)

※1 各事業年度の前の年度の3月最終週におけるレギュラーガソリンの全国平均値を用いる。(経済産業省 石油製品価格調査)
出典:https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/results.html#headline1

※2 各事業年度に最も近い年度における「ガソリン乗用車のJC08モード燃費平均値の推移」の全体平均値を用いる。(国土交通省 自動車燃費一覧)
出典:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn10_000002.html

※3 各事業年度に最も近い年度における、全国道路・街路交通情勢調査の昼間12時間平均旅行速度の全国合計値を用いる。
出典:https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/ir-data.html

Step 6 社長が支払う使用料を求める

最後にStep 1~5で計算した数字を使って社長が支払う使用料を計算します。
今回のケースでは、月22,070円を会社に支払うことになります。

月間使用料 計算式
22,070円 ①×(②/100)+③×⑦

計算式中の、「①×(②/100)」は減価償却費とその他の経費を使用割合で割った金額、
「③×⑦」は使用時間と使用時間当たりの燃料代から求めた金額です。
車両の取得価格、法定耐用年数、使用割合で金額が変わってくるため、それぞれの事情に合わせて計算してみてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
数字がたくさん出てきて面倒と感じられるかもしれませんが、
クリーンな会計をして安心して事業を進めるためにも、
客観的に説明できるように規定を設計しておくことが大切です。

繰り返しになりますが、個別の事案については顧問税理士等にご相談ください。

以上、ご参考になれば嬉しいです。

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