賃貸経営における外構整備・補修の重要性【不動産投資ではなく不動産賃貸業】
私は常々、「不動産投資」という言葉に違和感を持っています。
アパート経営は金融商品への投資ではなく、現場を持つ不動産賃貸業です。
そして、その賃貸業において軽視されがちなのが外構の管理・補修です。
建物本体(室内設備、内装、設備更新)には意識が向きやすい一方で、
- 駐車場
- アプローチ
- 共用部の舗装状態
は後回しにされがちです。
しかし、入居希望者が最初に目にするのは「外構」です。
ここが荒れていると、どれだけ室内をリフォームしていても、
「管理が行き届いていない物件なのでは?」
というマイナス印象を与えてしまいます。
さらに問題なのは、安全面のリスクです。
- アスファルトのクラック
- 陥没しかけの穴
- 段差のある舗装
これらを放置した結果、入居者や来訪者が転倒すれば、
最悪の場合、損害賠償や訴訟リスクに発展します。
外構補修は「美観」ではなく、
賃貸業としてのリスク管理そのものなのです。
アスファルトにクラックが発生するメカニズム
アスファルトは一見すると硬く、頑丈に見えますが、
実際には非常に環境の影響を受けやすい素材です。
- 夏場:高温で膨張
- 冬場:低温で収縮
この膨張と収縮を毎年、毎日、何年も繰り返すことで、
内部に応力が溜まり、やがてクラックとして表面化します。
特に日本のように、
- 四季がある
- 昼夜の寒暖差がある
- 雨や雪が多い
環境では、アスファルトの劣化は避けられません。
つまり、クラックは
「管理が悪いから起きる」のではなく「必ず起きるもの」。
だからこそ重要なのが、
- 小さいうちに
- 深刻化する前に
- 低コストで
補修していく姿勢です。
アスファルト全面打ち替えは高コスト|大家がやるべき判断
駐車場のアスファルトを全面打ち替えすると、
- 解体・撤去
- 新規舗装
- 養生期間
が必要になり、数十万円〜規模次第では100万円超も普通です。
もちろん、
- 広範囲に劣化している
- ベースが崩壊している
場合は業者工事が必要ですが、
- 線状のクラック
- 小さな穴
- 局所的な陥没
であれば、大家DIYで十分対応可能です。
私は、
「大家が自分でできることを知っているかどうか」
が、長期的な賃貸経営の収益性を大きく左右すると考えています。
前田道路「マイルドパッチ」を選んだ理由
今回使用したのは、
**前田道路株式会社の常温アスファルト補修材「マイルドパッチ」**です。
DIY補修材は数多くありますが、
マイルドパッチを選んだ理由は明確です。

マイルドパッチの公式特徴(抜粋)
- 化学反応タイプの常温アスファルト混合物
- 従来の揮発硬化タイプより耐久性が非常に高い
- 水と反応して硬化するため、施工が安定
- 雨天時・水たまり箇所でも施工可能
- 1袋20kg入り
- 厚さ4cmで1㎡あたり約5袋
- 製造日から約1年保存可能
「水があると施工できない」どころか、
水があった方が良いという点が、
現場DIYには非常に相性が良い材料です。

実際のDIY補修作業手順
用意するもの一覧
- 水
- ホース(できれば高圧洗浄機)
- スコップ
- 細い金属棒
- 金槌
- マイルドパッチ
- 自動車用パーツクリーナー
- 手袋
- ウエス
特殊な道具は不要で、
大家なら一通り揃っている物ばかりです。
洗浄|補修の成否を分ける最重要工程
クラック内部には、
- 土
- 砂
- 小石
- 草の根
が必ず溜まっています。
これを徹底的に除去します。
この工程を甘くすると、どんなに良い材料を使っても、
- 後日沈下
- 再クラック
が起こります。
ここは時間をかける価値があります。


クラック内部の地固め
洗浄後、細い金属棒や金槌で
クラック内部の地面を突き固めます。
「見えない部分を固める」
これがDIY補修で最も差が出るポイントです。

マイルドパッチ充填と締固め
スコップでマイルドパッチを投入し、
- 金槌で叩く
- 足で踏む
- 車で軽く踏ませる
などして締め固めます。
沈む場合は迷わず追い充填します。


細いクラックにも徹底的に充填します。

水を撒いて硬化促進
マイルドパッチは水と反応して硬化します。
- 表面が濡れる程度では不十分
- しっかり水をかける
これで1時間程度で実用強度になります。

清掃と道具の後片付け
残材を放置すると、
- 靴の汚れ
- タイヤへの付着
につながるため、丁寧に清掃します。
道具に付いたマイルドパッチの油分はパーツクリーナーとウエスで簡単に落ちます。
補修時期と粒径選びの実務的アドバイス
補修時期|寒い時期に行うのが有利な理由
アスファルトは温度変化により、常に伸び縮みしています。
- 夏場:熱で膨張
- 冬場:冷えて収縮
寒い時期はアスファルトが最も縮んだ状態です。
この状態でクラックを補修すると、春夏にかけてアスファルトが膨張しても、補修材が追従しやすくなります。
結果として、
- 補修直後の再クラックが起きにくい
- クラックの再発までの期間が延びる
というメリットがあります。
「寒い時期=作業が大変」と感じがちですが、
耐久性を重視するなら寒い時期の補修は合理的です。
粒径選び|クラックの幅と深さで材料を使い分ける
マイルドパッチには粒径の異なるタイプがあり、
クラックの状態に合わせた選定が重要です。
細いクラックの場合(ヘアクラック〜浅いひび)
- クラック幅が狭い
- 深さが浅い
- 表面補修が目的
➡5mmタイプがおすすめです。
細部まで入り込みやすく、仕上がりもきれいになります。
大きめクラック・穴・欠損がある場合
- クラック幅が広い
- 深さがある
- 軽度の陥没を伴う
➡13mmタイプが適しています。
締め固めやすく、構造的な強度を確保しやすいのが特徴です。
まとめ|外構補修は立派な「賃貸業の仕事」
アスファルトのクラック補修は、
- 特別な技術不要
- 良い材料が簡単に手に入る
- しっかりと洗浄すれば失敗しにくい
DIY向きの作業です。
外構を放置する大家と、
自分で手を入れる大家。
数年後、物件の状態と入居率に確実な差が出ます。
賃貸経営を「投資」ではなく
事業として捉えている大家さんには、
ぜひ一度チャレンジしてほしいDIYです。
以上、ご参考になれ嬉しいです。

コメント