今回は不動産管理業者の資格である賃貸不動産経営管理士の資格を大家さんが取得すべき理由について、実体験を踏まえてお伝えします。賃貸不動産経営管理士の資格取得を考えている人や、これから大家さんになりたい方にお勧めできる内容です。是非ご覧ください。
賃貸不動産経営管理士とは?
賃貸不動産経営管理士とは、専門的な知識をもって賃貸管理の職務を公正中立な立場で行う専門家として、賃貸不動産経営管理士協議会によって付与される資格です。令和2年6月に『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』が成立し、令和3年6月に完全施行されました。この法律では、賃貸不動産の管理業者の営業所に『業務管理者』の設置が義務付けられていますが、この業務管理者になるための要件として、賃貸不動産経営管理士が位置付けられています。このように、国家資格になったこともあり、賃貸不動産経営管理士資格の重要性は高まっています。
教養としての賃貸不動産経営管理士
さて、大家さんなどの不動産オーナーにとっては、賃貸不動産経営管理士の資格は必須でははありません。なぜなら、賃貸不動産経営管理士は管理業者のための資格であり、不動産オーナーがこの資格を持っていないからといって大家業をすることができないわけではありません。
しかしながら、不動産賃貸経営は勉強しなければ失敗する可能性が高くなり、経済的損失も大きくなる事業であることは間違いありません。そうなりたくなければ、とにかく学び続けることが大切だということです。
下記、令和3年度の賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲です。不動産のオーナーが知っておくべきものばかりではないでしょうか?
② 管理業務として行う賃貸住宅の維持保全に関する事項
③ 家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項
④ 賃貸住宅の賃貸借に関する事項
⑤ 賃貸住宅管理業法に関する事項
⑥ ①から⑤に掲げるもののほか、管理業務その他の賃貸住宅の管理の実務に関する事項
不動産管理業者と対応に話すことができるようになる
日本の賃貸住宅の管理形態は、契約も管理もすべて管理業者に委託している形態が全体の約65%と言われています。全てを管理業者に委託する場合、経営の主導権がどうしても管理業者側に寄ってしまいますから、家主にある程度の知識がないと、最悪の場合搾取されることになってしまうかもしれません。
不動産賃貸経営管理士の資格には、民法、賃貸住宅管理業法、宅地建物取引業法、建築基準法、消防法といった法律関係の事項や、契約、修繕や設備の事項が含まれます。不動産賃貸経営管理士の資格取得を通してこれらの知識を得ることで不動産管理業者と対等に話すことができると思います。
事業者としての意識が高まる
『不動産投資』か『不動産事業』かという呼び方に対する議論がありますが、熱心に取り組まれている方の中では、『不動産投資』の呼び方を嫌う方が多いように思います。財を投じて利益を得るという点では、賃貸不動産も株式や債券などの紙の資産と同じです。しかし、賃貸不動産は買って終わりではなく、企画、融資、法律、契約、経理、税務、リスク対策、管理・修繕や各種業者とのコミュニケーションなどの様々な業務を経て、満室経営をしてこそ利益が出るものなので、紙の資産のような比較的手軽な『投資』ではなく、『事業』として認識することが何よりも大切ということです。
また、最大の理解者であり協力者である金融機関からの信用を得て融資を受けなければ不動産賃貸業の規模を拡大するのは難しいです。金融機関は返済してくれる可能性の高い人にしか融資をしないので、堅実な事業計画・収支計画を作ってこれを説明するためにも事業として取り組むべきでしょう。
賃貸不動産経営管理士は不動産管理業者向けの資格ですから、その内容には不動産オーナーを支援する事項が多く含まれています。例えば、どのような建物をどこに所有して、何年間運営するのかという不動産賃貸経営の企画提案、建物の維持管理・修繕、更には相続や税務面の知識も含まれます。これらは不動産オーナーが事業として運営するためにも必要な知識です。
賃貸不動産経営管理士の資格取得のための勉強をすることで、『不動産事業者』としての意識が自然と高まります。
賃貸不動産経営管理士試験
お勧めの書籍
賃貸不動産経営管理士の資格の勉強をするための書籍は多数ありますが、資格取得だけを目的とするのではなく、不動産賃貸業としての知識をしっかりと得たい方には『賃貸不動産管理の知識と実務』が圧倒的にお勧めです。
なぜなら、この書籍は本家の賃貸不動産経営管理士協議会が作っていて、賃貸不動産のあらゆる事項に対して網羅的に書かれているからです。また、嬉しいのは『賃貸住宅標準契約書』の雛形の解説があり、自主管理で大家業をやる方にはとても役立つと思います。総ページ数が1022もあり、お値段も少し高いですが、買って終わりではなく辞書的に長く使える書籍です。
以上、参考になれば嬉しいです。
コメント