社員持株会を辞めた理由|リスク・拘束効果・資金流入構造まで徹底解説

資産形成

私はかつて、勤め先の社員持株会に加入していました。

毎月、給与から自動天引きで自社株を積み立てる仕組みです。

一見すると、奨励金もつき、コツコツ資産形成ができる魅力的な制度に思えます。

会社員なら一度は勧められたことがあるでしょう。

しかし、結論から言えば私はこの制度をやめました。

今回は、その理由を個人投資家・経営者の視点から徹底的に解説します。

人的資本と金融資産の集中リスク

社員持株会の最大の問題は、人的資本(労働力)と金融資産(投資資金)が同じ会社に集中することです。

  • 人的資本:自分の労働力をその会社に提供している
  • 金融資産:その会社の株式を保有している

この二つが同じ会社に偏ると、もし会社の業績が悪化した場合、給与(収入)と株価(資産)の両方が同時に打撃を受けます。

これではリスク分散どころか、二重のリスク集中です。

投資の基本である「分散投資」の観点から見ても、極めて危うい構造です。

退職を心理的に抑制する効果

社員持株会に入っていると、株式を解約・売却するには時間と手続きが必要です。

そのため、「辞めたら損をする」心理が働きやすくなります

特に、長年積み立ててきた額が大きくなるほど「ここで辞めるのはもったいない」という心理的ロックインが発生します。

会社にとっては優秀な人材をつなぎ止める効果がありますが、社員側から見れば自由なキャリア選択を妨げる束縛です。

流動性の低さ(売却に時間がかかるリスク)

上場株式の最大のメリットは、証券市場で即日売却できる高い流動性です。

しかし、社員持株会経由で購入した株式はこのメリットが損なわれます。

売却には申請や取りまとめ期間があり、現金化まで数週間かかるケースも珍しくありません。

市場が急変したときにすぐ売却できないのは、投資家にとって致命的なデメリットです。

個人資産からの会社への資金流入

持株会の構造を財務諸表的に見ると、これがいかに会社側にとって都合のいい資金調達手段かがよく分かります。

  1. 給与支払いは損金になる
    会社は社員に給与を支払うと、その金額は損益計算書上の費用(販管費)として計上され、法人税の課税対象から除外されます。
  2. 社員がその給与で自社株を購入
    給与を受け取った社員は、その一部を持株会経由で自社株に投資します。会社から見れば、この資金は返済義務も利息負担もない「純資産の増加」として資本に組み込まれます。

つまり——
会社は損金処理できるお金を払い出しておきながら、その一部を株式発行という形で取り戻すのです。
しかも、その資金には返済義務がなく、利息も支払う必要がありません。

財務的に見れば、こんなに都合のいい資金調達は他にありません。

推奨してくる上司に感じた恐ろしさ

持株会を熱心に推奨してくる上司に対して、私は価値観のズレ恐ろしさを感じました。

「これは得だから入ったほうがいい」「全員やってる」「会社を応援せよ」という言葉の裏に、すでに深く組織の価値観に染まり、客観的判断力を失っている可能性を感じたからです。

これは単なる投資判断の話ではなく、洗脳的な集団思考の危険性にもつながります。

投資は本来、自分の判断と責任で行うべきです。

辞めてどうなったか

社員持株会を辞めたことで、資産の流動性が高まり、ポートフォリオ全体の分散も進みました。

また、会社に心理的に縛られている感覚から解放され、キャリアの自由度も向上しました。

私は持株会ではなく、自分のビジネスを持ち、自分が100%株主の法人を作りました。

この方が爆発力も自由度も高いと感じています。

この価値観に共感する方は、同じ道を検討する価値があるでしょう。

まとめ:社員持株会は「万能の福利厚生」ではない

  • 人的資本と金融資産の集中リスク
  • 退職心理の抑制効果
  • 流動性の低さ
  • 会社に都合の良すぎる資金流入構造
  • 組織的な価値観の同調圧力

もちろん、会社の成長が確実で、かつ短期的に売却する予定がないならメリットもあります。

しかし、これらのリスクや構造を理解せずに加入してしまうのは危険です。

投資先は、会社だけに限る必要はありません。

以上、ご参考になれば嬉しいです。

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