サブリース契約のメリット・デメリット解説|上手な活用方法と不動産賃貸経営成功のための重要ポイント

不動産賃貸経営

今回は何かと忌避されがちなサブリース契約について改めて考えてみます。
賃貸経営におけるサブリース契約(家賃保証システム)は、所有者(オーナー)が物件管理会社と契約し、管理会社が一括で賃貸物件を借り受け、入居者へ再賃貸する仕組みです。
サブリース契約は特に賃貸経営の初心者や、物件管理を手軽にしたいオーナーに人気がありますが、必ずしもメリットばかりではありません。
この記事では、賃貸経営におけるサブリース契約のメリット・デメリット、そして上手く事業を進めるための重要なポイントについて改めて考えます。

サブリース契約のメリット

家賃収入が安定する

サブリース契約の最大のメリットは、空室時でも契約時に約束された一定の家賃収入が保証される点です。
管理会社が一括で家賃をオーナーに支払うため、入居者が退去しても収入が途切れることなく、長期にわたる収益の安定が見込めます。
これは特に、住宅ローンを利用して物件を購入したオーナーにとっては安心材料となります。

管理の手間が減る

サブリース契約では、物件の管理や入居者の募集、トラブル対応などを管理会社が行うため、オーナーの手間が大幅に省けます。
日常的なクレーム対応や修繕の依頼などに頭を悩ませることなく、本業に集中できるのも大きなメリットです。
遠方に住んでいるオーナーや、兼業大家さんには非常に便利なサービスです。

長期的な空室リスクを抑える

サブリース契約によって、空室による収入減少のリスクが軽減されます。
通常の賃貸では空室が出るたびにリフォームやリノベーション費用がかさみ、収益が不安定になりがちです。
サブリース契約があれば、空室リスクは管理会社が負担するため、オーナー側はより安心して賃貸経営ができます。

融資を受けやすい

サブリース契約は、金融機関にとっても一定の家賃収入が保証されるという点で評価されやすい契約です。
特に、物件購入やリノベーションのために融資を受けたい場合、サブリース契約があることで返済能力があるとみなされ、融資審査において有利に働くことがあります。
銀行や金融機関は、物件から得られる家賃収入を元にローン返済を計画するため、家賃が保証されているサブリース契約はリスクが低いと判断されやすくなります。
自己資金が少ないオーナーや、複数の物件購入を計画している人にとっては、サブリース契約が融資を円滑に進める大きな助けとなるでしょう。
この点については取り上げられることが少ない印象ですが、私は融資を受けやすいことがサブリース契約の最大のメリットだと考えています。


サブリース契約のデメリット

家賃の引き下げリスク

サブリース契約では、初期の契約段階で提示された家賃額が、数年後に引き下げられることがあります。
例えば契約期間の更新時に「周辺相場が下がった」という理由で、当初の家賃額が見直されることも少なくありません。
特に、オーナー側が価格交渉に弱い場合は、契約開始時よりも大幅に低い家賃に設定されてしまうリスクがある点には注意が必要です。

管理会社の経営破綻リスク

サブリース契約の家賃保証は管理会社の経営状態に依存しているため、管理会社が経営難に陥ると家賃の支払いが滞る可能性があります。
サブリースを提供する管理会社には大小さまざまな企業が存在しますが、特に規模の小さい企業や財務健全性が低い企業との契約は避けた方が無難です。
サブリース契約を検討する際には、契約先の企業の経営状況や信頼性をしっかりと確認しましょう。

管理手数料がかかる

サブリース契約では、管理会社が一定の家賃保証を提供する代わりに、手数料がかかるのが一般的です。
一般的な管理手数料は賃料の10~15%程度が相場とされていますが、手数料が高くなると収益が圧迫される原因になります。
手数料が高く収益性が低い物件では、サブリース契約を利用しない方が利益が上がる場合もあるため、契約前に手数料の負担がどの程度かを慎重に確認しましょう。

物件に対する管理権限の制限

個人的にはこれが最大のデメリットだと考えています。
サブリース契約では、物件管理のほとんどを管理会社に委ねることになるため、オーナーが物件に対して直接管理する権限が制限されます。
例えば、リフォームや修繕が必要な場合、管理会社を通じて行うことになるため、自由に改装ができないことがあります。
また、入居者が見つからない時期が続いた場合、オーナーが独自に入居者を探すことが難しくなる場合もあり、全体的な物件運営に対する影響が及ぶ可能性があります。
語弊を怖れずに言うと、不動産賃貸経営の主導権を管理会社に握られるような状態になります。
独立して自由を目指す人には苦痛になると思います。

サブリース契約で上手く経営するための重要なポイント

管理業者の利益を考える

賃貸経営でサブリース契約を利用する際、オーナーの安定収入だけを重視しすぎると、管理会社の利益が低くなり、サブリース契約の解消を打診される可能性が高まります。
家賃引き下げを管理会社から提示された際には、安易に拒否するのではなく、周辺家賃相場や管理会社の経営状況も理解し、柔軟な対応を心がけましょう。

リノベーションや設備更新で客付けしやすい物件に仕上げる

物件の魅力を高めて入居者が付きやすい状態にすることは、空室を防ぎ、安定した収益に繋がります。
管理会社も、競争力の高い物件の管理に対して積極的になるため、リノベーションや設備更新は賃貸経営の成功要素です。
これはサブリース契約に限らず、一般管理でも基本になる考え方です。

管理業者の担当者の心理的負担を下げる

管理業者との良好な関係を維持するためには、担当者との円滑なコミュニケーションが大切です。
オーナーの高圧的な姿勢を避け、管理者が意欲的にサポートできる環境を整えることが重要です。
管理業者の担当者はオーナーから常にプレッシャーを受けています。
面倒なオーナーと関わりたくないというのが人間の本能的ですから、あまりにも強い心理的負担をかけると、サブリース契約の解消を打診される可能性が高まります。
どんなビジネスにも共通することですが、良い仕事の基礎は良い人間関係です。

財務優良な管理会社を選ぶこと

サブリース契約では、管理会社がオーナーに一定の家賃を保証しますが、管理会社の財務状態が不安定だと、長期にわたって家賃を確実に受け取ることが難しくなるリスクがあります。
そのため、契約前には管理会社の財務健全性をしっかり確認しましょう。

以下のポイントが管理会社選定の参考になります:

  • 過去の業績や財務報告書を確認:上場している企業であれば、公開されている財務諸表や決算資料を確認することが可能です。
    非上場企業の場合も、契約前に財務状況を確認できるよう求めることが望ましいです。
    特に、十分な現預金があるか、流動負債が過剰にないか、債務超過になっていないか等がポイントです。
  • 経営者や企業の信頼性:業界での評判や信頼性も重要です。
    インターネットや口コミサイトでのレビューや、同業者の紹介などから情報を得ることができます。
  • 経営の安定性:経営期間が長い企業や、大手の管理会社は、財務基盤がしっかりしている可能性が高いため、経営破綻のリスクが低いと言えます。

長期的な安定収入を求めるオーナーにとって、管理会社の財務状況は非常に重要な要素です。
財務的に健全な会社と契約することで、予想外のトラブルを防ぐことができます。


サブリース契約が向く人とそうでない人

サブリース契約は非常に便利な賃貸経営の手法ですが、全てのオーナーに適しているわけではありません。
ここでは、サブリース契約が向いている人と、そうでない人の特徴を解説します。

サブリース契約が向いている人

  1. 安定した収入を重視する人
    家賃保証があるため、空室が出ても一定の収入が確保できるサブリース契約は、ローン返済や生活費に安定した収入を求めるオーナーに向いています。
    特に、賃貸経営に初めて挑戦する人や、経済的な不安定要素を減らしたい人には非常に有効です。
  2. 物件管理の手間を減らしたい人
    遠方に住んでいるオーナーや、日常的に物件の管理に関わる時間が取れない人にとって、管理会社に全てを任せられるサブリース契約は便利です。
    また、物件のリフォームや入居者対応などの細かな業務を管理会社が代行してくれるため、賃貸経営の手間を極力減らしたい人にはぴったりです。
  3. 安定的にローン返済を続けたい人
    物件購入の際にローンを組んでいる場合、収入の不安定さは大きなリスクとなります。
    サブリース契約によって収入が一定に保たれることで、ローン返済をスムーズに進めることができるため、リスク回避を重視するオーナーに向いています。
  4. 融資を受けたい人
    物件から得られる家賃収入の安定性が高まるため、家賃が保証されているサブリース契約はリスクが低いと判断されやすくなり、融資が通る可能性が高まります。

サブリース契約が向いていない人

  1. 高い収益を目指す人
    サブリース契約では、保証される家賃は市場相場よりも低く設定されることが多いため、高い収益を求めるオーナーには不向きです。
    特に、立地が良く賃料が高くなる物件を所有している場合、サブリース契約では収益性が低下してしまうことがあります。
  2. 自由な経営をしたい人
    サブリース契約では、物件管理のほとんどを管理会社に委託するため、オーナーが自由に物件の改修や入居者選定を行うことが難しくなります。
    自分で物件運営のコントロールをしたい、または物件の価値を独自に高めたいと考えるオーナーには、サブリース契約は適していないかもしれません。
    独立して自由な経営を目指す人にとっては、この制約がストレスや不満の原因となり、賃貸経営における創造的な自由や独自の経営スタイルを実現することが難しくなります。
    自らリスクを取って独自に経営方針を決定し、自由に管理したいオーナーにとって、サブリース契約は苦痛になる可能性があります。
  3. リスクをとって収益最大化を狙いたい人
    サブリース契約では空室リスクは軽減できますが、その分の手数料や家賃の減額が避けられないため、リスクを取ってでもより高い収益を目指したいオーナーにとっては、制約の多い契約となる可能性があります。
    市場動向に応じて収益を最大化したい場合、サブリース契約は制約が大きく、リスク許容度の高いオーナーには向きません。

まとめ

サブリース契約は、賃貸経営における空室リスクの軽減や管理の手間削減に大きく貢献しますが、契約にはいくつかのリスクも伴います。
これを回避し、長期的な成功を収めるためには、信頼できる管理会社の選定が鍵を握ります。
「管理業者の利益を考える」「リノベーションや設備更新で客付けしやすい物件に仕上げる」「管理業者の担当者の心理的負担を下げる」ことに加えて、「財務優良な管理会社を選ぶこと」が、特に長期的な賃貸経営において重要です。
また、サブリース契約が向いている人とそうでない人の特徴を理解し、自分の経営スタイルに合った契約方法を選択することが大切です。サブリース契約の利点を活かしつつ、リスクを管理することで、安定した賃貸経営を目指しましょう。

個人的には、大規模な建物で入居者集が多く、管理の負担が大きい物件はサブリースで、戸建賃貸やコンパクトなアパートは自主管理で、というように柔軟に使い分ける方法が良いと思います。

以上、参考になれば嬉しいです。

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