信用力UP、節税、相続など、ご自身の事業を法人化するときの事情は様々だと思います。
その中で、「マイクロ法人を使って経済的自立を目指す」という考え方は、FIREムーブメントを筆頭にサラリーマン収入だけに頼らない生き方が広がる昨今、益々重要になると思います。
法人を活用して、社会に貢献しつつ、経済的自立を達成することができれば素晴らしいですね。
今回は、不動産賃貸経営を法人化して2年目ということで、法人化してよかったことを2つ伝えします。
「赤字の繰越期間」中小企業は10年
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除という制度があります。
青色申告をしている事業者が赤字になった場合、その赤字を次の会計期間以降に繰越して、黒字だった決算期に相殺できるという有難い制度です。
欠損金の繰越控除には期間があって、個人事業主の場合は3年間ですが、法人の場合は10年間(中小法人等、平成30年4月1日以降の事業年度で生じた欠損金額)に延びるのです。
不動産賃貸経営において、欠損金の繰越控除は非常に重要な制度です。
なぜならば、賃貸不動産では、大規模修繕工事が定期的に発生し、その度に多額の費用が発生するからです。
定期的に行う大規模修繕工事の費用は資本的支出(明らかに価値を高めたり、耐久性を増すもの)に該当しない限り、全額をその事業年度の経費(損金)にすることができます。
その場合、数百~数千万円規模の経費が単年度で生じるため、赤字になる可能性が高いです。
大規模修繕工事を行い、1期目が1200万円の赤字になった場合について、個人と法人で比較してみましょう。
個人の場合
期 | 利益 | 欠損金控除 | 欠損金合計 | 課税所得 |
1期目 | ▲1200万円 | ▲1200万円 | 0 | |
2期目 | 300万円 | 300万円 | ▲900万円 | 0 |
3期目 | 300万円 | 300万円 | ▲600万円 | 0 |
4期目 | 300万円 | 300万円 | ▲300万円 | 0 |
5期目 | 300万円 | 0(失効) | 0(失効) | 300万円 |
個人の場合は、欠損金の繰越期間が3年であるため、第4期末には残り300万円の欠損金が失効してしまい、第5期目の課税所得が300万円になります。
法人の場合
期 | 利益 | 欠損金控除 | 控除合計 | 課税所得 |
1期目 | ▲1200万円 | ▲1200万円 | 0 | |
2期目 | 300万円 | 300万円 | ▲900万円 | 0 |
3期目 | 300万円 | 300万円 | ▲600万円 | 0 |
4期目 | 300万円 | 300万円 | ▲300万円 | 0 |
5期目 | 300万円 | 300万円 | 0 | 0 |
法人の場合は、欠損金の繰越期間が10年であるため、第5期にも控除を受けられます。そのため、第1期で生じた1200万円の赤字を第5期目まで繰越して、全額を経費することができます。この場合、第5期目の課税所得は0です。
賃貸不動産経営では、出ていくお金が多いため、3年で経費化することが難しいケースが出てくると思います。したがって、課税所得を上手くコントロールするためにも法人を活用することをお勧めします。
信用力が高まる(マイクロ法人+サラリーマン)
個人よりも法人の方が信用を得やすいといわれています。
その信用がどこからくるのでしょうか。
それは、経営に対する強い意思や覚悟を持っていると思われるからだと思います。
法人設立では、資本金捻出、登記、税務署・都道府県・市区町村への届け出など、様々な手続きを経る必要があります。
更に、決算申告、年末調整や社会保険の手続きなど法人を運営していくためには様々な手続きが継続して発生します。
このような苦労を経て法人運営が成り立つため、小規模なマイクロ法人であっても意思や覚悟は必要なのです。
また、法人でどのように利益を得て社会に寄与していくのかという計画性も求められます。
このような法人ならではの様々な苦労の対価として、信用があるのだと思います。
さて、信用が最も役に立つ場面は銀行からの資金調達でしょう。
私の場合は、取引実績が無い銀行に収益不動産購入資金の融資相談を持ち掛けました。
その時は法人設立前でしたが、事業計画と財務状況をしっかりと説明したことで法人化と同時に融資を受けることができました。
融資担当者によると、法人の場合であっても、個人の信用力も一定は求められるとのことでした。
法人化後にサラリーマンを辞めるのかどうかを聞かれましたので、安定した収入のあるサラリーマンの方が小規模企業経営者よりも財務基盤が安定しているとみなされることは間違いなさそうです。
融資の場面で今後のキャリアを尋ねられた時は、法人経営とサラリーマンを両立していくとはっきりと伝えるといいと思います。私の場合、今後も法人経営とサラリーマンを両立することを示すために、銀行に法人の決算報告をする際には、個人の源泉徴収票を添付するようにしています。
サラリーマンとして給与所得を極め、同時に法人を経営するという方法は信用力強化に有効だと思います。
▼賃貸不動産経営を法人化するときの事業形態はこちら▼
以上、ご参考になれば嬉しいです。
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