会社を守りつつ、節税をして貯蓄もできるのが、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している『中小企業倒産防止共済』です。経営セーフティ共済とも呼ばれています。
今回は、不動産賃貸業で中小企業倒産防止共済に加入できて、掛金を経費化できるかどうかを確認した結果をお伝えします。個人事業と法人の両方のケースについてみていきましょう。
『中小企業倒産防止共済』とは?
はじめに、中小企業倒産防止共済について触れておきます。
中小企業倒産防止共済は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度であり、掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れることができます。本質的には連鎖倒産や経営難を防ぐための共済ですが、なんと積立てた掛金が損金(経費)に算入できる税制優遇が受けられるのです。そして、掛金の支払いを40ヵ月以上継続すれば、解約時に100%返金されます。
・掛金が全額経費になる。
・掛金は月額5,000円~20万円の範囲で自由に選べ、増額・減額ができる。
・積立て上限は800万円まで。
・掛金の支払いを40ヵ月以上継続すれば、解約時に100%返金される。
・前納制度を使って1年分をまとめて損金算入できる。
・無担保・無保証人で、掛金の10倍まで借入できる。
・解約金は雑収入として課税されるので出口戦略が重要。
【結論】法人では加入も経費化もできる
結論から言うと、不動産賃貸借の場合、法人では加入もできて掛金を全額損金算入(経費化)できます。一方で、個人事業では加入はできますが、事業所得以外の収入(不動産所得等)には、掛金の必要経費としての算入が認められません。
加入 | 経費化(損金算入) | 不動産賃貸借業に対する共済金貸付 | |
個人事業 | できる | できない | できない |
法人 | できる | できる | できない |
ここで、個人事業の場合、税法上は建物の貸付については、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます。いわゆる5棟10室基準というものです。この基準を満たしていると65万円の青色申告特別控除が受けられるなどのメリットがあります。
- 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
- 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
しかし、いくら5棟10室以上であっても、個人事業である以上、不動産の貸付けによる所得は事業所得ではなく、不動産所得であるため、中小企業倒産防止共済の掛金の経費化は認められません。
また、法人であっても個人事業であっても、不動産賃貸借に基づく債権が回収困難になった場合に共済金貸付を利用することはできないようです。借入れによって連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐという本質的な機能は不動産賃貸業では働かないということです。
やっぱり法人の方が有利
このように、細かく調べてみると経営形態が個人か法人かによって共済掛金を経費化できるかどうかが変わります。やはり、不動産賃貸経営で中小企業倒産防止共済を活用して事業計画を作る場合、法人の方が税金マネジメントの観点で有利といえます。一方で、不動産賃貸借に基づく債権が回収困難になっても共済金貸付を利用できないことは覚えておきたいです。
なお、実際の加入要件はケースバイケースのようですので個別にご相談することをお勧めします。(中小機構HP)
以上、ご参考になれば嬉しいです。
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